溺愛フレグランス



「私も嬉しい。
昼間に海辺を歩いたせいで何だか疲れてるし、料理をしなくてこんなに美味しい物を食べれるなんて本当に幸せ」

こういうところが気を遣わなくていい。
幼なじみの特権はありのままの姿でいいところ。

「晴美の嫌いなレバーとピーマンとパクチーは、多分、省かれてるから」
「え? そうなの?」

朔太郎は目の前に並ぶ料理を凝視している。

「コメント欄にレバーとピーマンとパクチーはNGって書いたから」

私は苦笑いをした。
私の嫌いな食べ物は子供の頃から変わらない。
そして、その事を朔太郎はちゃんと覚えてくれている。

「ありがとう、覚えていてくれて」
「忘れるわけないよ。
散々、俺が代わりに食べさせられたから」

私はその言葉はスルーする。
昔の記憶をたどれば、朔太郎の言う事に間違いはない。

朔太郎は冷やしておいた赤ワインをグラスに注ぐ。

「今日は俺達にとって大切な記念日にしよう」

私達はグラスを重ねる。
カチンという控えめな響きは、特別な夜にふさわしい。
少しだけ開けた窓から漂う潮の香りは、私達が海辺にいることを思い出せてくれた。
朔太郎の選んだワインはほんのり甘くてフルーティな味わいで、ついつい飲み過ぎてしまう。