「朔…
もう、そろそろ、夕飯の買い出しに行かなくちゃ…」
このままこんな場所で愛を交わし始めそうな勢いに、私は必死に抗った。
朔太郎はそんな事どうでもいいみたいに、まだねっとりとしたキスを続ける。
「ほら、行くよ…」
私は朔太郎の頬にキスをして、それをお終いの合図にする。
「朔太郎のデートプランでは、今日のディナーは何なのかな?」
強引にキスを止めたせいで、ちょっと不機嫌になっている朔太郎にそう聞いてみた。
「それは…
俺もちゃんと手伝うから、晴美が献立考えて。
料理ってほとんどした事がないの、晴美も知ってるだろ?」
そうだった、忘れてた。
「道の駅の魚屋さんに、美味しいお刺身の盛り合わせは頼んであるから。
あと、おつまみセットを買って、それで良くない?
めっちゃ、美味しいワインは準備しております、お姫様」
私はクスッと笑った。
美味しいワインだけで良しとしよう。
朔太郎に新たな一面は求めない。
もし、急にお料理上手な男性になっていたら、逆に面白くない。
私達は手を繋いだまま、岩場から砂浜に下りた。
そして、手を繋いだまま、また砂浜の道を仲良く歩く。
七歳くらいの二人に戻って、キャッキャッと楽しそうにじゃれ合いながら。



