「会社が破格の値段であのビルを買う事になって、一番上の階は住居にして人に貸そうって話になって、ちょうどその時住んでたマンションが契約更新の時で、俺はその上の階に住みたいって直談判して、住む所がなくなるからしょうがなくしばらく実家に帰って来て、そしたらこんな事になって」
「もう、何だか、災難にあったみたいじゃない。
実家に帰って来た事が」
朔太郎は大きな声で笑う。
そして、岩場に座れそうな場所を探し、平べったくなった岩の上にまず私を座らせて、朔太郎は私の隣にくっ付くように座る。
「災難だよ、俺にとっては。
だって、結婚なんて絶対にしないって心に誓ってたはずなんだから」
私はちょっと複雑な気持ちになる。
「そうだよね…
本当、そうだよ…
結婚は考え直していいよ。
私がしたがってるからって、朔太郎がそれに合わす必要はないし。
結婚相手は、また、ゆっくり探すから。
それは心配しないで」
私の中で少しだけ夢が覚めたような気がした。
友和さんの一連の出来事から、私の思考回路は迷走している。
朔太郎が結婚しようと言ってくれた事を、本気で受け止めた事が恥ずかしくてたまらない



