溺愛フレグランス



少しだけ昼寝を済ませた私達は、海辺を歩く事にした。
夏の季節とは違う海の色がある。
十年前に来た季節は夏の季節。仲間達とワイワイ海水浴をした時の海の色は透明に近い澄んだブルーだった。
今日の海の色は濃い群青色。
私はそんな事を考えながら、遠い水平線を眺めていた。

「あの頃の俺達は、十年後にこんな風に、この砂浜を二人で歩くなんて、絶対想像すらしてないよな?」

私は笑いながらうんうんと何度も頷く。

「でも、この海は、そんな俺達にお帰りなさいって言ってくれてる」

朔太郎は握っていた私の右手を離し、今度は右肩を自分の左側に引き寄せる。

「コロナの世の中になって、人との付き合いが希薄になって、本当に大切な人と過ごす時間が急に増えて、そんな非常事態に、俺は晴美が側にいてくれた事に本当に感謝してる。
少しの間だけど、実家に帰ろうと決断した俺を褒めてやりたいよ」

朔太郎のポジティブ思考は本当に可愛らしい。
そして、そんな朔太郎の明るさは近くにいる人間も明るくする。