「あの手の男は、扱いようによっては、すごく単純なの。
でも、プライドだけは誰よりも高い。
今回、プライドがズタズタに傷ついちゃったみたいね」
「すみません…」

村井さんは私の凹んだ様子を見て、楽しそうに笑った。

「晴美ちゃん、あの人の事は私に任せていいから。
それに、金輪際、晴美ちゃんに連絡をする事も会いに来る事もないと思う。
私がそうはさせないから、大丈夫よ」

村井さんは早口でそう話し終えると、意気揚々と私と由良ちゃんに手を振って仕事へ戻った。
二人はもう少しゆっくりしておいでと、村井さんにはあり得ない優しい言葉を残して。

「…由良ちゃん?」

多分、私一人だけが事情を把握していない。
村井さんが居なくなった事を確認した由良ちゃんは、ベンチに座り込んで私をしっとりと見つめた。

「晴美さん…
もう一つ新たな恋が芽生えるかも…」
「は?」

由良ちゃんは私の反応を見て、今度は楽しそうに笑っている。

「あの友和さんって人、村井さんの好みのタイプなんです。
実は、大好きで大好きなのにダメダメで別れた村井さんの元カレによく似てて、いや、その元カレより、多分、村井さんの好みかも。
背も高いし、見た感じもクールだし」