溺愛フレグランス



帰りの車の中、朔太郎は何だか楽しそうだ。
私は助手席でそんな朔太郎の横顔をぼんやりと見ている。

「朔、ずっと顔が笑ってるよ」
「そう?」
「どうしたの?」

朔太郎は運転しながら、横目で私を見た。

「どうした?って、え、何、もう忘れたの?」

忘れた?って聞かれても、たくさんの事があり過ぎて何の事を言っているのか分からない。

「今日は疲れて頭が回らないよ。
何か楽しい事があったっけ?」

朔太郎は信号で車が止まっている間に、信じられないというような顔で私を見た。

「俺ら結婚するんじゃん」

あ、そうだった…
私は朔太郎の真っすぐな瞳に後ろめたさを感じてしまう。
ノリで言ったなんて口が裂けても言えない。でも、結婚を口にした事で私の中の何かが弾けたのも事実だった。諦めなのか喜びなのか。

「もうこの勢いで、このまま晴美のお父さんに言っちゃおうか?
俺はそれでも全然構わないけど」
「い、いや、今日はちょっと待って…
色々な事があり過ぎて私の頭がついていけない。
それに、友和さんのこれからの動向も心配だし」