溺愛フレグランス



「さすがにもう居ないだろ?」

私はまだ恐怖におびえていた。
振り返ったら隣で微笑んでいそうで、怖くてしょうがない。

「だ、大丈夫…?」

朔太郎は怯える私の手を強く握りしめる。

「もう見えないから大丈夫!」

私は朔太郎の力強い言葉に膝の力が抜けそうになる。
朔太郎は、そんな私の様子を察して歩道の隅の方へ私を引っ張って行く。
そこにはオンボロのベンチがあった。朔太郎はその埃が溜まったベンチに思いっきり息を吹きかけて、とりあえず座れそうな状態にしてくれた。
私はそこに倒れ込むように座った。

「俺が参上しなかったら、今頃、晴美の命はなかったかもな」

こんな状況なのに、朔太郎は楽しそうにそんな悪い冗談を言う。

「もう、そんな怖い事言わないでよ…
でも、朔があそこにいてくれて本当に感謝してる。
どうして、あそこに居たの?
たまたま偶然?」

私の素っ頓狂な質問に、朔太郎は面倒くさそうに目を閉じる。
その仕草にすら、私は何も気付かない。
それくらい心がパニックを起こしていた。