溺愛フレグランス



少しずつ場所を移動していた朔太郎は、私達を連れて細い路地に入った。ちょうど死角になるその場所で、私達三人だけになる。
私は朔太郎の口から出た知らない名前に驚愕していた。
山本友和って偽名だったの?

「あなたが晴美の事を色々と調べたように、僕もあなたの事を事細かに調べさせてもらいました。
あなたが晴美に渡した名刺で、大体、裏を取る事ができた。
でも、これ以上は言いません。
あなたが晴美の前から何事もなく姿を消してくれるなら、晴美にも何も言わないです。
どうされますか?」

私は朔太郎に隠れているから、友和さんの様子も朔太郎の様子も全く分からない。
でも、それがよかった。
私はジッと動かずに、二人の会話に耳を澄ませた。

「警察か?」
「いえ、違います。普通の会社員です」

友和さんは何かを考えているようだった。しばらく重苦しい沈黙が続く。
すると、突然、朔太郎が違うトーンで話し出す。