溺愛フレグランス



友和さんの声は上ずっている。私はその声を聞いただけで体が固まってしまう。
朔太郎はそんな私を自分の背中に隠した。

「晴美に何か用ですか? 遅いから迎えに来たんですけど」
「……晴美? 君は誰?」

こんな状況なのに、朔太郎はいつもの朔太郎だった。落ち着いているというか、冷静過ぎるというか、昔からパニくる朔太郎を見た事がない。

「晴美に今日ちゃんと伝えるようにって言ったのに、何も聞いてないですか?」

朔太郎の言動に友和さんは困惑している。後ろに隠れている私もそうだけれど。

「以前、電話でちょっとだけ話しましたよね?」
「あ~、幼なじみって」
「そうです」

私は恐る恐る朔太郎の背中越しに友和さんを見た。友和さんは苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
私はその友和さんの豹変した顔を見て更に怖くなり、すぐに顔をひっこめた。

「晴美ちゃん、ちょっと話をしようよ」

友和さんは朔太郎の事は無視をして私にそう話しかける。
すると、一瞬、朔太郎の背筋が伸びるのを感じた。

「山本さん、いや、大島さん、大島末男さん」