溺愛フレグランス



「結婚なんて、幸せなのは最初だけだよ。
ま、俺は結婚には向いてない人間だったという事に気付くための試練だったと思ってる」
「もう、朔、やめてよ。
私はまだまだ結婚に夢見る夢子ちゃんなんだから。
結婚と幸せはイコールだと思ってる」

隣で朔太郎は天井を見上げ、わざとらしくため息をついた。

「もしや、中学生の頃に言ってた結婚の理想と同じじゃないよな?」
「中学生の頃? 私、何か言ってたっけ?」

智也のお店の駐車場に車を停め終えると、私は朔太郎にそう聞いた。

「忘れたの?
幸せそうな顔をしてさ、朔、私の理想の結婚は、年は私より三つ上で、身長は私より三センチ高ければよくて、そして、兄弟のいっぱいいる人で、マンションに住んでる人と結婚する事なのって、俺によく話してた。
私は一人っ子で家族は三人家族で、それなのに家は大きくて、それが何だか寂しく感じちゃって、だから、結婚するときは、マンションで狭いところでギュウギュウで暮らしたいの、なんて不思議な事も言ってたな」