溺愛フレグランス



「え~、やだ~、どんな匂いなの?
昔から変わらないって、それって体臭の事だよね?
もう、朔太郎って、変な事言わないでよ~」

私はそう言って、窓を全開にした。
朔太郎は隣でケラケラ笑っている。

「変な匂いじゃないから、窓閉めるぞ。
いい匂いだよ。ほんわかでまろやかで甘~い感じのさ」

私はそれでも窓を開け続けた。
朔太郎の説明では、調味料のみりんのようにしか聞こえない。
みりんのようないい匂い、なんて言われてもきっと誰も喜ばない。

「体臭っていうより、石鹸とかシャンプーとか柔軟剤とか、色んな匂いが混ざって俺好みの匂いになってる。晴美だけの匂いって感じ」

朔太郎はいつもこうやって私の事は全部認めてくれる。だけど、匂いまで褒めてもらえるなんて思ってもみなかった。

そんな朔太郎を隣に乗せて、私達はしばらく紫色の夜の世界をドライブをする。ほどよく田舎のこの街は、高い建物が少ないせいか星空が澄んで見える。

「こんな風にドライブするのっていつ以来だっけ?」
「う~ん、俺が結婚する前だったのは間違いない。
二十五くらいの時、小学校の仲良しで集まった時じゃないかな。
でも、あの時は、俺の車でドライブだったけど」