朔太郎はそう言いながらも私の手を離さない。
朔太郎の家に入ると、幼い頃の記憶が蘇ってきた。
朔太郎のお父さんとお母さんは美男美女の夫婦で、朔太郎より十個上のお兄ちゃんは朔太郎とは種類の違う完璧な美少年だった。
この太田家は、家もスタイリッシュ、中に住む人々も優しくて人間的にハイレベルな人達だ。
偶然にもお父さん同志が知り合いで、元々地元の我が家の近くに太田家が家を建てたという事で、家族ぐるみの付き合いが始まった。
朔太郎は吹き抜けになったリビングの暖房を入れ、大きな窓のブラインドを下げる。
シャンデリアの温かみのあるほのかな明るさが、何だかとても心地いい。
私は皮張りの大きなソファに腰かけた。
このソファは、子供の頃のソファとは違っている。
そんなの当たり前、あれからかなりの歳月が経っているんだから。
朔太郎は冷蔵庫からオレンジジュースを持ってきて、私の前に置いた。
愛媛の有名なミカンジュースらしく、瓶から透けて見えるオレンジ色の液体は高級そうに見える。
「コップいる? そのまま瓶で飲んだ方が美味しいと思うけど」



