私が夕飯を食べずに待っていると、七時に朔太郎が迎えに来た。
お母さんとお父さんと少しだけ会話をして、朔太郎は私を連れて外に出る。
「晴美、鍵持った?」
「鍵? 何の鍵?」
「車に決まってんじゃん」
そんな事を言いながら、朔太郎はガレージに停まっている私の車の方へ歩き出す。
「え、もしかして私を誘ったのは運転手ってこと?」
朔太郎はプンプンし出した私の肩を引き寄せた。
「そんな怒んなよ。
いわゆる一石二鳥っていうやつだよ。
晴美は美味しいご飯が食べれるだろ? 俺は美味しいビールが飲める。
晴美が酒豪になってなければの話だけど」
悔しいけれど、私は全く飲めない。
「じゃ、今日は朔太郎のおごりね」
私の言葉に朔太郎は更に体を密着させる。
「もう、そんなくっつかないでよ。
いい大人なんだよ、私達…」
朔太郎は私の前では弟のようになる。
普段の朔太郎は俺様気質でどちらかというと尖っている性格なのに、私の前ではごろにゃんの子猫に変身する。
車に乗り込むと朔太郎は大きく息を吸った。
「晴美の匂いがする。
昔から変わらないよな。晴美の匂いは」
私はギョッとした。
匂いっていう単語には、あまりいいイメージがない。



