溺愛フレグランス



でも、朔太郎だけは違った。
村井さんに向ける眼差しと私を見る眼差しは、分かり易いほど別のものだ。村井さんとの話の合間に私を見つめる朔太郎は、眼帯しか見ていない。そして、眼帯を見つめながら苦しそうにため息をつく。そのため息の理由はよく分からないけれど。

「もうそろそろお開きの時間ね…
朔ちゃん、今日は楽しかった。
本当は、この後に、二次会とか行きたいんだけどね、一応、私達、市役所の人間だからこれ以上の事は自粛しなきゃならないの。
コロナでも出ちゃったらたいへんだから」

朔太郎はうんうん頷いている。
村井さんが朔太郎の事を朔ちゃんと呼び始めたという事は、朔太郎を気に入った証拠だ。
私はそんな二人を横目に、石田さんと食後のデザートを堪能していた。

「晴美ちゃんは僕が送っていくよ。同じ方向だしね」

石田さんはいつものようにそう言ってくれた。コロナじゃない以前の飲み会の後は、こういう流れでいつも石田さんが私を送ってくれた。
でも、今日は様子が違う。だって、近所の朔太郎が蛇のような目でこちらを睨んでいる。