溺愛フレグランス



私がわざと憤慨したようにそう切り返すと、村井さんも石田さんも困ったように笑った。
何となくこのケガの件は消えてなくなりそうな雰囲気になる。
私は石田さんにこのお店について色々聞きたいと思った。そして、完全に話題を完変えたい。
斜め前に座る蛇のような目の朔太郎の事は無視をして。

石田さんはこの店の常連だった。
美味しい料理や飲み物を丁寧に説明してくれる。
私が食い入るようにその話を聞いていると、朔太郎が急に席を立った。

「朔、どうしたの?」
「ちょっと電話。
あ、ごめんなさい、ちょっとだけ席を外しま~す」

軽いノリの朔太郎を、村井さんは目を細めて見ている。

「ねえ、晴美ちゃん、朔太郎君って何で離婚したの?」

そうだよね、やっぱり、絶対にそこが気になるよね…

「朔太郎って自分本位っていうか、多分、その頃、独立したばかりで仕事に夢中で、奥さんの事をほったらかしだったみたいです。
束縛とかそういうのが苦手なタイプなので、結婚って向かないって確信したみたい」

村井さんは眉間に皺を寄せて何かを考えている。朔太郎の品定めに忙しいのか、その後の会話には入ってこなかった。