5分くらい考えても分からなかった。


「やっぱ、分からん」



「なら父ちゃんが教えてやる」
「うん」


「人間の寿命は70年。蝉は7日たい。やからな蝉の1日は人間の10年分。やけんそれだけ一生懸命とたい」



「人間の3000倍、一生懸命生きようって頑張りよるとぞ。(えら)かと思わんか?」
「思う」



「だけん…お前も蝉んごつ頑張ってみい。父ちゃんもな、蝉んごつ頑張らないかんって思うて店の名前を『蝉の声』にしたと。」


「ふーん。」




「じゃあ、うちも頑張るけん。」
って言ってはみたものの正直、子供のアタシには難しかった。




大人になった今でも良くは分からないけど、あの頃よりちょっとは分かる気がする。