なんでそげな名前にしたと?
       なんで『蝉』?
      馬鹿にされるとよ。
       恥ずかしかやん




 って小学生の頃お父さんに愚痴ったこともある。その時、お父さんはこう説明してくれた。




「芹那…蝉の声ってうるさかろ?」
「うん」


「でもな…蝉の気持ちになって考えてみい」
「うち蝉やなかし分からん」


「まあな、蝉ってどの位生きれると思う?」
「二年?十年?」


「違う。もっと短かか。」
「んなら…半年?」


「違う。一週間とぞ。」
「嘘…」


「お前にお父さん嘘ついたことあるか?」
「ううん…ない。」


「そげん短かと?」
「そげんたい。たった7日か8日とぞ。」


可哀想(かわいそう)なんやね。蝉って」
「そうな…やけん蝉の声って人間には五月蝿(うるさ)く聞こえる。」


「うん、うるさかもん。うち嫌いやん。」
「父ちゃんも昔は好かんやった。でもな考えてみろ、蝉の気持ちになって。」


「うん…考えてみる。」