──平原を渡る風に目を細めるアルクを一瞥し、同じ方向を見つめる。

 何気ない生活、穏やかな日々に、アルクはどんな気持ちなんだろう。

「英雄ってことは、敵がいたんだよな?」

 出し抜けに問いかけられた親友は目を丸くした。まさか俺から訊いてくるとは思わなかったんだろう。

「この世界のモンスターとは、まったく形が違ったけどね」

「へえ。そうなんだ」

 特殊な位置にあったからなのかエネルギーも溜まりやすく、それを内包して生まれてくる人間も定期的に現れていた。

「たぶん俺は、その力の一部を持って生まれてきたんだと思う」

 しかし、そのエネルギーには二面性があり、均衡(きんこう)を保つという性質があった。

 聖と邪、光と闇、陰と陽──どちらかが突出すれば、真逆の性質に変わりバランスを取る。

 これが非常に厄介で、プラスのエネルギーは人間に吸収されやすく、マイナスのエネルギーは地中に溜まる。

 もちろん、エネルギーの全てがそうじゃないにしても、人間側が不利であることは確実だった。