──兄弟のように育ってきた幼なじみは時々、どこか遠い目をする。何かを思い出しているのか、その瞳には憂いが見て取れた。

 ずっと昔、どうしてそんな顔をするのかと尋ねたことがある。

「やり残してきたことがあるんだ──」

 それは、とても大事なことで、大したことじゃないと言う。

「どっちなんだよ」

 と呆れたら、なんとも複雑な顔をした。

「──おまえさ。あのこと、誰にも言ってないよな?」

 ふと気になって確認する。

「当たり前だろ」

 アルクは眉を寄せて不満げな顔をした。

「そうか? ガキのころ突然、おまえがあんなことを言うもんだから俺はびっくりしたぞ」

「お前だから言ったんだ」

 信頼しているお前だから、馬鹿にされてもいいと思って話した。