転の生-うたてのせい-

 
 ──言っちゃなんだが、アルクは良い奴だ。

 顔も性格も、能力だって高い。だから村の女性陣には大人気だ。けれどアルクは恋愛に興味はまったくなさそうだった。

 いや、なさそうではなくて前世に何かあったっぽい。

「告白──しようとしていたんだ。世界が滅びる、その瞬間に」

 馬鹿だろう? 目の前で世界が崩壊していく様を見ながら、彼女に好きだと打ち明けようとした。

 立ち上がり、いつものように空を仰ぐ。俺はそれを座って見上げた。

「返事を聞く時間もなかったかもしれないのに」

 受け入れても、拒まれても、世界は滅びるしかないのにな──小さく笑って視線を落とした。

「そうだったのか。なんか、悪いな」

「いいって。前世(まえ)のことなんだし」

 困ったように笑うアルクに少し胸が痛んだ。

 もうここまできたら完璧に信じてるよな俺……。いやまあ、疑う余地がないっていうか。