"なにか分かるかも?" そう言って笑う七星は、少し前に北斗が魅せた笑顔によく似ていた。
「おっ、いいんじゃん?いくとこないならしばらく俺んちいていーし」
「なんで北斗の家なのよ。私の家に決まってるでしょ?」
「えー?」
「…ねぇ。解消まで、しなきゃダメ?」
睨みを利かせ合う双子に割って入る。
解消まで、なんて、距離を置くことは視野に入れるかのように言ってはみたけど、イメージなんてこれっぽちもついていない。
同棲をはじめてからは確かに1年足らずだけど、その前の3年間も、一緒にいなかった時間の方が、きっと短い。
距離を置くって、どれくらい置いたらいいのか。昴と離れるってどんな感じなのか、想像なんてできない。
「当たり前でしょ?」
「ってことで、仕事終わりに作戦会議しよーぜ」
また一つ増えてしまった答えの出なさそうな問題に、頭を悩ませ出した私の肩を弾むように叩くと、双子コンビは立ち上がる。
途中、iPhoneが震えていたから、どちらかの上司から連絡があったのかも。腕時計をみると、確かに昼休憩に入ってから1時間が経とうとしている。
食器を片付けて双子の後を追うと、入れ違いで入ってきた、昴の姿。
「あ、おつかれさま」
なんとなく後ろめたくて。一度ばっちりと合わさった瞳をそらしてしまう。
「…あぁ」
感じ悪かったかなとすぐに顔を向き直したけれど、みえたのは私の横を過ぎていく昴の背中。
私よりも素っ気ない返事だけが、耳の中に残った。



