それから二人で遊園地の乗り物、全部制覇することに。二人ともお昼は手軽なものにして、食べてすぐ次の乗り物に乗り、終わったら走ってまた次の乗り物にと二人して夢中になっていた。

そしてあっという間に夜になった。

「もう六時か。みーちゃん、家まで送っていくよ」

「一人で帰れるから大丈夫よ」

「ダメだよ。女の子がこんな暗い満ち歩いちゃ。何かあってからじゃ遅いんだよ?」

来る途中に痴漢と遭遇したし、それにあの辺はよく人が襲われているって噂もあるし。

「大丈夫よ。それに、私と一緒にいると北川くんの方が危ないわ。迎えに来た父に投げ飛ばされてしまうわよ」

「えっ...」

俺は今日、みーちゃんが痴漢を投げ飛ばしたことを思い出した。ていうか今、なんて言った?『迎えに来た父に投げ飛ばされる』って?もしかして噂の正体ってみーちゃんのお父さん!?もし俺がみーちゃんと歩いていたら俺もあんな風に投げ飛ばされるのかな...。血の気が引いてきた感じがする。

「私のところは兄妹揃って風紀員やっていて、注意した生徒からよく逆恨みで家の近くで喧嘩を売られると、父が飛んできて投げ飛ばしちゃうのよ。だから北川くん。あなたの為にもやめた方がいいわ」

恐るべし、桜井家...。

「なら駅まで。駅まで送らせて...!」

でも俺はそれでも心配だった。いくらそんな強いお父さんがいて、自分も強いからって女の子を一人で帰らせることなんて自分の良心が許せなかった。

「分かったわ。本当に駅までよ」