「ねぇ、みーちゃん」

「何?」

「...みーちゃんって誰かを好きになったこと、ある?」

帰りの電車の中で北川くんが突然聞いてきた。

「ないわ。私は嫌われ者だもの。気になる人が出来てもすぐに怖がって話すことなんてなかったもの...」

少し悲しい気持ちになってきた。男の子でも女の子でも仲良くしたいと思っても避けられてきた。だから、恋をすることが、恋をする気持ちがあまりよく分からない。

例えその気持ちが分かって、その人と親しくなってもきっとその人もこれまでと同じように私を避けてしまう。それが怖くて人と接するのも私自身も避けるようになってきた。

「俺ならそんなことしないのに...」

...息を吐くように静かに呟いた。

「何か言った?」

「なんでもないよ。そろそろ駅着くね」

「そうね」

あっという間の休日だったな。

電車を降りて、待ち合わせをした駅前まで歩いた。

「ここで平気よ」

「本当にここでいいの?」

「えぇ。今日は誘ってくれてありがとう。久しぶりに楽しかったわ」

「みーちゃんに喜んで貰えて良かったよ。また行こうね。遊園地」

「その時は絶叫マシンは控えめにしてね」

「えー。絶叫マシンに乗らないと遊園地に来た意味ないよ〜」

「いいえ。控えさせてくれないと私の体力が持たないわ...!」

「もう、みーちゃんの意地悪」

「意地悪でいいわよ。じゃあ、また明日ね。北川くん」

「またね。みーちゃん。気をつけてよ〜?」

「分かってるわよ」

家に向かって歩きだし、少しだけ後ろにいる北川くんの方に手を振った。北川くんはずっと私の方を見て手を振っていた。私が見えなくなったのが分かるとやめて、後ろを向き、帰って行った!