明日の君が、笑えるように。

そう言って笑ったら、春風がふわぁっと優しく私たちを包み込んでくれた。
それに揺れて、私の長い髪の毛もさぁっと舞う。
ニッコリと笑って、
「先行ってるね」
と言うと、将夜はまだ赤くて、ちぃちゃんもほんのり赤くなってる。
そりゃそうか。すぐ隣で、カップルがイチャイチャしてる様なもんだもんなぁ。
あとでごめんって言っとかなきゃ。
「わぁっ桜じゃん!柚実、写真撮ろうぜ!」
「あははっ航斗何興奮してんの!そこら辺にある桜と同じじゃん?」
「同じだけど、違うくね?ちょうど今、風でそよそよしてるし、あったけぇし!」
目の前のカップルの話を聞いて、思った。
暖かい、春の風。
なのになんで。なんで私には…………
「あっれ!ななたん!」
「うぉっ福田さんか!!」
「ごめーんななたん!写真お願いしていい?」
「あ、私ですか?!勿論ですよ〜」
ニコっと笑ってスマホを受け取る。
なんでか私は先輩たちから"ななたん"って呼ばれてるんだ。知らない先輩にも、ね。
今呼ばれた先輩も、全く知らないんだけどなぁ。