【完】イミテーション・シンデレラ


「昴、私熱はないわ! それよりご飯の途中でしょう?行儀が悪いわ!」

「熱がないならいいんだけど。具合いが悪い様だったらすぐに言ってよ?心配だから」

「分かったから。冷めちゃうから早く食べましょう。
それにしても昴は料理がすっごく上手よねぇ。何でも出来るもんね、あんた」

「岬だって上手じゃん。
ほら、前にさ、静綺ちゃんの大学卒業のお祝いの時に皆でパーティしたでしょ。
寮の人達皆不器用で、岬ばっかり作っててさ。
あの静綺ちゃんだって、岬の料理すごいって言ってたじゃん」

「別に…私は大した事ないわ。 料理なら静綺みたいなプロには絶対に勝てないし
静綺の料理って味付けも薄めなのに、何か優しくって癒される味がするのよねぇ~」

「でも俺、岬の濃い目の味付けの料理も好きだよ。」

にこりと微笑みながら、上品にシチューをすする。

あんな私の料理で良いのならば、今度作る? 口まで出かかった言葉が、どうしていつも出ないまま終わるのだろう。

だって怖いの。そんな事を言ったら、昴がどんな反応をするのか。だからいつも素直になれない。