【完】イミテーション・シンデレラ


「お腹は空いてる?」

「空いてないわ」

そう言った瞬間、お腹がぎゅるっと鳴る。なんつータイミングで鳴ってくれるのよ?!ムードぶち壊しじゃない!

真っ赤になって顔を背ける私に対し、昴はきょとんとした顔をして笑いを必死に堪えている。

そして綺麗な顔をぐしゃぐしゃにさせて、大笑いするのだ。 素直に笑えない私は、昴や梨々花が本当に楽しい時や嬉しい時、顔をくしゃくしゃにさせて無邪気に笑うその笑顔がとても羨ましくて、すごく好きだった。

「お風呂が沸くまで、一緒にご飯を食べよう。 今日は早く仕事も終わったから、シチューを作ったんだ。」

料理まで平然とやってのける男なんだから、非の打ち所がない。やっぱり嫌味ったらしい男だわ。

そういうのは普通女の仕事でしょう?


昴の家で、昴のパーカーを着て、昴の作ってくれたシチューを食べる。

至れり尽くせり。 こいつの彼女は幸せ者だろう。 どこまでも完璧な昴は、余り自分の弱みを人には見せない。

けれど知ってるんだ。 そんな昴だって、悩む時があるって。 昴の人気が出たのは、丁度真央が仕事を休止していた頃だった。

精神的な病気で一時期真央が仕事を休んでいた時、代役として昴が全ての仕事をこなした。