【完】イミテーション・シンデレラ


「岬、着いたよ」

笹田さんの言葉で現実に引き戻される。
つまらない過去の事なんて思い出してしまったわ…。

ありがとう。そうお礼を告げて、車をゆっくりと降りる。

昴から連絡を貰った地図を頼りに、都会の空に高くそびえ立つタワーマンションを見上げる。

都会の濁った空には、星は見つけられない。 代わりにまだ頼りない三日月がこちらを見下ろしている。

梨々花を放っておけなかった理由は、全く似ていないのに自分に似ている部分があったからだわ。

アイドルになる前、小さな頃から可愛い可愛いと持てはやされ育った私は、余り女の子からは好かれなかった。

女の子達の輪の中に入って行くのは苦手で、いつもひとりぼっちで寂しくて寂しくて仕方が無かった。

そんな時だった。テレビの中で可愛い衣装を着て、元気いっぱい歌うアイドルを見て元気づけられたのは

いつの日か、自分もテレビの中の人になり、誰かを元気づける存在になりたい。そう思うようになった。

苦手だった女の子の集団に自ら紛れる事により、そこで生きて行く為の処世術を身に着けた。 それでもまだまだプライベートでは女の子同士の人間関係は苦手なままだった。