ある日レッスン着をびしょびしょにされたずぶ濡れの梨々花が、ひとりレッスン室で声を殺して泣いていた。
そんな梨々花に自分のレッスン着を貸して、泣いていたって何も変わらないでしょう?悔しかったら誰にも負けない気持ちを持って頑張るしかないの。と叱りつけたつもりが、何故か懐かれる羽目になってしまった。
梨々花の事を嫌いな理由は全く身勝手な自分の嫉妬からくるものだ。
私は、アイドルとして梨々花には勝てない。 人気が上がり、知名度も上がって、ファンも増えて行き、段々と輝いていく梨々花の背中を見て素直に想った事。
どれだけ頑張ったとしても、生まれ持ったオーラを磨く事は出来ない。 ダンスや歌は頑張れば頑張る程上手くなる。努力が裏切らないのは本当。
けれど、選ばれた人間はどんな世界にもいる。 私は梨々花のように無意識に人を惹きつけてやまない存在にはなれなかった。 結局は頑張って平均点以上の事が出来る、どこにでもいるアイドルにしかなれなかったのだ。
成せなかった物は、成せる才能を持つ者に嫉妬する。 私が彼女を嫌う理由は、自分の醜い嫉妬からくるものだと既に気が付いていた。



