「梨々花ちゃん、久しぶりだね」
きっと私の笑顔は引きつっているだろう。
「また岬さんと仕事が出来て嬉しい!
さっき…大滝さんにも偶然会ったんですよ!」
「ああ…さっき昴が楽屋に来て言ってたわ…」
「本当ですかぁ?! あのー…岬さんにだけ言うんですけれど
実は大滝さんとは何回かバラエティーで共演してて、助けてもらったりしてたんですよ。
あんなに売れっ子なのに、飾った所がなくて優しくて素敵な人ですよね」
嫌な予感がした。 女は単純な生き物なのだ。
笑顔がひきつったまま、ピクピクと動く。
「岬さんは、大滝さんと仲が良いんですねッ」
「まあ……真央と仲が良いから、その繋がりなんだけど」
「まさか付き合ってるとか?!」
「ないない!全然ない!」
両手でぶんぶんとそれを否定した。 すると梨々花はぱあっと分かりやすく顔を明るくする。
そしてくしゃくしゃにした顔で素直に笑うのだ。 動悸が止まらない。 梨々花のほんのりピンクの頬。潤んだ瞳。それは恋をしている顔そのものだ。
「良かったぁー…岬さんがライバルだったら勝ち目なんかないし」
「へ?」
「ずっと前からいいなって思ってて…
今回このコレクションで大滝さんが相手役だって知って、これはチャンスだって思って。
岬さんが付き合っていないっていうならばお願いがあるんですが…協力して欲しいんですッ!」



