頬の熱を冷ますように、楽屋に用意していたお茶を一気に飲み込むと、再び楽屋がノックされた。
扉を開けた先に居たのは、私の大嫌いな女だった。
「岬さぁん、久しぶり ですッ!」
頭が痛い。
今1番会いたくない女であるのは間違いない。
サラサラのボブの黒髪で、大きな猫目が特徴的な女。 アイドルらしからぬ、ロック調の服装をしていて黒い皮のジャケットに身を包む。
私服はいつもそうだった。 アクセサリーもごついシルバーのブランドが好きだった。 可愛い服はアイドルの時にいくらでも着れるから、普段はこういう恰好をしていたいらしい。
そして何故だろう。最後に会った日より、梨々花が綺麗になったような気がするのは。
グループのセンターになった事で、自覚が沸いて来たのだろうか。
磨けば、どこまでも美しくなる女だったのは知っている。
そして、自信は人を美しくさせる。 人は「輝く!」と決めれば、どこまでも美しくなる。
センターの責任を背負った梨々花は、日々綺麗になっていく。 自信は力になる。そして魅力になっていくのだ。
自分が体現した事だから、よく分かる。 けれどそれよりもっと大切なのは恋だ。恋は、人を驚く程美しくさせる。



