「へ、へぇー…。でも梨々花と昴だったら身長差もぴったりだし、一緒に並ぶと絵になりそうね」
唇を尖らせたまま、昴は少しだけシュンとした顔をする。
ひとり騒ぐ真央に聴こえないように、ぼそりと呟く。
「俺は…岬の方が良かったけどね」
その時、真央のマネージャーの坂上さんが慌てて楽屋に入ってきて、「ここにいたぁー!」と引きずるように真央を連れて行く。
「何だよッ、離せよ!」
「もぉー真央くんすぐ逃げるんだからー
衣装合わせがあるから早く行くよッ!
あ!昴くんも呼ばれてたよ!」
「本当、それは急いで行かなくちゃ。 じゃあ、岬また後でね」
スッと立ち上がり、こちらを見下ろす昴はもういつもの笑顔だった。
引きずられるように連れていかれる真央に呆れながら、横を歩く。
皆が出て行った楽屋、私は暫くその場から動けなかった。
ぶんぶんと頭を振って、頬に落ちる熱を消す。
’俺は…岬の方が良かったけどね’ その言葉に、大きな意味はない。
ただただ私とは気心が知れているから、仕事がしやすいってだけだ。
やっぱり昴はずるいよ。そうやって女の子を直ぐに勘違いさせちゃうんだから。
そんな態度を取ってたら、女の子はすぐに昴が好きになっちゃうんだから。 女って案外単純な生き物なんだから。



