【完】イミテーション・シンデレラ


「なぁ、お前から運営側に言ってくれない?交換してって」

真剣な顔をして、馬鹿みたいな事を言う真央。
私のどこにその権限があるって言うのよ。

真顔で「無理」と返すと、真央は後ろから両手で私の首を絞めつける。
いつものようにじゃれ合っていると、ノックもせずに楽屋の扉は開く。

「何やってんの?」

そこに立っていたのは、昴だった。 珍しく無表情のまま、じゃれ合う私と真央を見下ろす。

やめろ、と言っても真央は私から離れてはくれない。よっぽど西園寺愛歌が嫌と見える。

頼むって、岬~と甘えた声を出して、緩く首にまとわりついてくる。 こんなじゃれ合いはいつもの事だ。 いつもの事だったのに…

楽屋にツカツカと靴音を立てて入って来た昴は、私と真央を思いっきり突き放した。 いつものように甘い笑顔は浮かべていない。

「何だよ、昴」

「べっつにー。
どーして真央が岬の楽屋に居るんだよ。自分の楽屋があるだろう?」

そう言って、私と真央の間にどかりと腰をおろす。

やっぱりちょっと不機嫌そうだ。 いつも笑ってばかりいるから、珍しい。何か嫌な事でもあったのだろうか。

真央は昴の顔を覗きこんで、ハッと何かに気づいた。 その顔は徐々に青ざめていく。