【完】イミテーション・シンデレラ


「何が不満だと言うのよ?」

そう言うと眉をぴくりと動かして、机から顔を上げた。なんて恐ろしい顔をしているのよ。 全く!静綺以外には優しい顔を見せやしないんだから。

「だって、こんな糞みたいなウェディングコレクションなんて俺は出たくなかったんだ!
それが坂上さんが良い話だし、真央くんが主役みたいなもんだよっておだててきて!
大体俺のかっこいいタキシード姿は静綺の為だけに取っておきたかったんだ!」

何を女みたいな事を言っているのよ。その静綺は真央のタキシード姿楽しみ!って言っていたけれどね。

「気に食わないのは、ペアの相手役だ!」

私がぐちゃぐしゃにした紙を広げて、自分の名前を指さし青筋を立てる。

姫岡真央 その名前の隣に西園寺愛歌の名前が並んでいる。 その西園寺愛歌は今日は忙しい為に顔合わせに出席出来ないらしい。

真央のマネージャーの坂上さんが言っていた主役って話は満更嘘でもなさそうだ。

西園寺愛歌は、今1番注目の歌手でモデル業も営んでいる。ティーンからは絶大な人気がある。 その相手役に選ばれたのならば、このコレクションの注目のひとつではある。

けれど真央の顔は冴えない。