黒色のスウェットはティシャツ同様私には大きすぎる。 ぶっかぶかだ。 ぶかぶかな上に大分捲り上げないと引きずってしまう程長い。

…あいつどれだけ足が長いのよ。いけ好かない奴だわ…。
着替えてから追いかけるように寝室の扉を開く。


扉を開くと、そこは広いリビングルームが広がる。 きちっと片付けられている所が昴らしい。 整理整頓されたリビングは、寝室同様余り色がない。

モノトーンの家具と、観葉植物の緑だけ。 昴は下着姿のままキッチンに立って、珈琲を淹れている。部屋中に珈琲の朗らかな匂いが立ち込める。


ボーっと立ち尽くす間抜けな姿の私を見て、座りなよ。とソファーへと促す。

一夜を共に過ごしたというのに、顔色のひとつも変えずにいつも通り。 何事もなかったかのようにいつものように飄々とした態度を取る。

…だからあんたの、そういう所がムカつくって言うのよ。


昴から少し離れたソファーに座ると、珈琲カップをこちらへ差し出した。

大きな目を細めて、にっこりと笑う。いつもいつも疑問だった。どうしてこんな優しい顔をして笑えるのか。 八方美人は嫌い。 誰にでも優しい人は不安になるから。

だから真央みたいなタイプの男の人が好きだった。