急いでお風呂場と洗面所に行って、元カノの残して言った物を回収する。 化粧水やらが入ったゴミ袋を得意そうに抱えて二ッと口角を上げる。

思わず顔が綻んで、そのまま昴の背中にぎゅっと抱き着く。 いつだってこの背中に守られ、癒されてきた。 今度は私が疲れた昴の心を癒してあげたい。


昴の背中越し、四角い窓から東京の夜景が一望できる。

青白く染まって行く空は、光の都を包み込んでいく。 淡いオレンジ、黄色、緑 様ざまな色が溶け合っていって、それはまるで満点の空に流れゆくミルキーウェイによく似ていた。

背中から腕を回して、両手をぎゅっと握りしめる。 願いはひとつ。 昴も一緒だったらいいな……。

「どうした?」

「星にお願いしてるのよ。」

「東京の空に星なんて見えないけれど」

「昴はいつだって上を向いて歩きすぎよ。 ちょっとは下を向いて歩く日があってもいいじゃないの。 人間だもの」

「ハハッ。何でみつをだよ」

「いつだって笑っていて、前向きでばかりいなくたっていいって言ってるの。
たまには下を向いて、泣き言を言ってもいいっての。
完璧じゃなくても、昴が好きよ――」