「私って、昴の彼女?」

肩に置いた頭がぴくりと動く。

「何で今更?」

「だって…私達ってセフレだったんじゃあ…」

そこまで言ったら、慌てた様に肩から頭を離して「はぁ?!」と叫んだ。

タクシーの運転手が迷惑そうな顔で、ルームミラー越しこちらを見つめる。…ごめんなさい。質の悪い酔っ払いと思われているに違いない。

真っ直ぐにこちらを見つめる昴は、信じられないという顔をしてまじまじとこちらの顔色を伺う。

「セフレって何か知ってる?!
都合の良い時だけセックスをする関係だよ?!
いわば遊びじゃん。そんなの」

焦った昴の、珍しい程大きな声。聞いてるこちらが恥ずかしくなるくらい。 タクシーの運転手の目が…痛い。

昴って焦った時、こんな顔をするんだ。

見た事もない程、余裕を失くしている。 そんな顔も新鮮だけど…一体昴は何を言ってるのだろう?

「そんな大きな声で言わなくても分かってるよ!」

「岬一体何を言ってるの?
あの日俺に告白してきたの、岬じゃん。」

「あの日…?」

「そうだよ。 それで俺がそろそろ付き合おうかって言ったら、岬すっごい笑顔でうん!って喜んでたじゃん…。
まさか…岬…」