ステージの上から手を振りながら、類くんは前を見たまま言った。
「やっぱり俺岬ちゃんのファンで良かった。 可愛くって、いっつも一生懸命な所が好きだったんだ。
でも岬ちゃんが頑張れるのは、きっと理由があるからなんだね。 つーか、俺は視線が痛いっす…」
「視線?」
ちらっと後ろを振り向いた、類くんが指さした先。
ステージに手を振りながら笑っている昴の姿がある。 けれど目が合うと、ツンっと顔を背けられた。
ちょっ…。 さっき仲直りしたと思ったんだけど?! えー?!私の事助けてくれて、お姫様抱っこで医務室まで運んでくれたじゃんか。
数メートルの距離だったけれど、ウェディングドレス姿で結婚式みたいだなあってうっとりしてしまった自分が馬鹿みたいじゃんかよ?!
何故かくっくっと類くんが笑いを堪えている。 昴はもう、ステージに向かって満面の笑みを惜しみなく振りまく。
「いっつも大滝さんの視線が怖かった。 あの人っていっつもニコニコしてるけど、分かりやすい所もあるんだね。意外過ぎてびっくりだけど」
「そう?!昴は基本的にいっつもニコニコしてる人だけど?」
「岬ちゃんはもうちょっと素直になりましょう。
お酒の力を借りずとも。」



