真央の代役としてこなしてきたドラマの数々。 全員から好かれるのは不可能で、真央と比べられて昴への辛辣な言葉があったのを私も、きっと本人も知っているだろう。
けれど昴は愚痴のひとつも零さずに、真摯に仕事に向き合ってきた。
今、芸能界で活躍出来ているのは偶然ではない。
頑張っている姿は、きっと誰か見ている。 それは才能のなかった私が体現したものだから、知っている。
私と同じ努力が出来るアイドルがいたとしたのならば、誰でも南条岬になれる。 その努力が並大抵のものではなかったから言える。
そして昴も実はそう思っているのではないかと密かに感じていた。 それ程、昴は売れるまで時間のかかった俳優なのだ。 だからこそ、そんな昴を尊敬している。
「一条さーん、南条さーん、次の次、出番なのでよろしくお願いします!」
スタッフさんの声が響いて、類くんはぎゅっと私の手を握り締める。 丁度そこに、本番を終えた昴と梨々花の姿があった。
梨々花は昴の横で彼の腕を掴み屈託なく笑う。 昴は足をぴたりと止めて、真っ直ぐにこちらを見つめていた。
類くんが顔を近づけて、囁くように言った。
「あの日の岬ちゃんが言ってたんだ。 本当は昴が好きなのって。でも片思いで辛くて仕方がない。でも好きなのって何度も何度も」



