顔を真っ赤にしていたけれど、西園寺さんの叱咤のお陰で何とかはなりそうだ。
全く人をハラハラさせる男なんだから。
「アレは大丈夫よ。真央は何だかんだ言っても本番は決める男だから…」
「そ、そっか。ならいいけど。姫岡さんのメンタルが弱いって噂本当なんだね…。
それでもドラマ現場とかでも一発で決めちゃうんだから、それも才能なんだろうね」
「そうね。真央は才能がある人だからね。 そうじゃなきゃあの性格でこの芸能界は渡っていけないと思うわ。
才能なかったらただのポンコツだしね」
フッと小さく笑って、類くんがモニターへと目を落とす。
「けれど、大滝さんは努力の人なんだよね?」
「へ?」
丁度ステージの中央。 観客の声援がより一層大きくなる。
昴と梨々花は客席へと頭を小さく下げると、背中を見せて再び来た道を歩き出す。
くすくすと類くんの小さな笑いは止まらない。
「岬ちゃん、本当に覚えていないの?あの夜の事」
不思議な顔をして類くんを見上げると、類くんの真っ黒の瞳は柔らかく揺れる。



