類くんの視線の先、真央と西園寺さんがスタンバイしている。
魂が抜けきった顔をしている真央の横で、西園寺さんが険しい顔をして何か言っている。

文句のひとつやふたつ言いたくなるのも分かる気がする。 バチンっと頬を叩く大きな音が狭いステージ脇で響く。

その音と衝撃でハッと目を覚ましたように、真央の瞳に怒りがじんわりと滲む。

「何をする…!この俺様の顔を殴るな!」

「ボーっとしてんじゃないわよッ。もうすぐ本番なのッ。あんたヘマしたら絶対に許さないわよ?!」

「な!お前に言われたくねぇ!」

「私に言われたくなきゃシャンとしなさいよッ。たく、男の癖に情けないんだから!
私達はこの枠のメインなのよ?!本当だったらあんたみたいな男と一緒に歩きたくないんだから!
ここまで来てしまったのならば、そろそろ腹を据えろ!こんの豆腐メンタル男が!」

「て、てめぇ!!
俺は姫岡真央だ!
この俺に出来ない事はない!
お前の方こそ俺と隣で並んで歩くんだから、ドジのひとつでもしたら許さねぇからな!」