こくりと頷いて、携帯に目を落とす。 何度も文章を作っては、消して。
けれども結局送るべき言葉が分からなかった。

どれだけ悩んでいても、どれだけ想っていても、相手に伝えなければそれは無かった物として消えて行くだけなのに。

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少しだけ、違う人に目を向けて見るのもアリなのかもしれない。

昴の事が好きすぎて、安易にセフレなんて関係になってしまったからこんなに苦しいのかもしれない。

前の様に友達だったら、つまらないヤキモチなんか妬かないのかもしれない。 昴とは友達に戻った方がいいのかもしれない。こんな苦しい想いをするのならば。


その日は、朝から動き回っていた。
新しいCMの撮影が入っている。

ふんわりとした女の子らしい衣装に身を包み、片手に新発売の飴玉を持って笑顔を作る。

何度もカットを繰り返し、それを繋ぎ合わせていく。 浮かない顔ばかりしていられない。 気合いを入れ直して、カメラの前とびっきりの笑顔を作る。