リハーサルは滞りなく進められた。 私はファッションショーの類の仕事は余り経験がないけれど、モデルとして活躍する類くんに終始リードされっぱなしだった。

けれど類くんのお陰でリラックスして仕事が出来たのも事実だ。

仕事を終えた後、類くんは人懐っこい笑顔を浮かべて、一緒に写メを撮ってとお願いをしてきた。

そしてその写メを送りたいから、と連絡先を訊かれた。断る理由が見つからなくって、連絡先の交換をしてしまう羽目になった。


楽屋に戻って、大きなため息が漏れる。
ドレスを着るのも疲れたし、ライトを浴びすぎて頭がクラクラして気持ちが悪い。

今日は仕事ももう終わり。ゆっくりしたかったのに、騒がしい男はノックもせずに不躾に楽屋の中に入って来る。

もううんざりだ。

「お疲れ。」

「ああ…真央、お疲れ。」

勝手に楽屋に入って来たくせに、疲れた顔をして床にぺたりと転がり込む。

どうやら、あれから相当西園寺さんにしぼられたらしい。そしてこいつは愚痴を言いに来たに違いないのだ。…私だって疲れているのに、なんつー身勝手な男だ。