その時、類くんと私が呼ばれた。
リハーサルは始まってしまう。 昴とは会話も出来なかった。
笑っているのに不機嫌そうにこちらを見つめていて、私のドレス姿について何も言ってくれなかった。
いつもだったら、1番に可愛いって言ってくれるのに、何も言ってくれなかった。 優しい言葉をかけてもらえるのが、当たり前だと思っていた。
苦しい…。 昴が私の存在を無視するような真似をするから。 ちらりと見つめても、目は一切合わなかった。 そのままリハーサルは始まってしまった。
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手を繋いで、ステージ上を歩く。
幾つものライトに照らされて、頭がクラクラする程眩しい。
きちんと笑えていたかどうかは、定かではない。
類くんは、隣で色々な話をしてくれた。えらく人懐っこく、感じの良い子だ。
「何かこうやって歩いていると、本当に結婚したみたい!」
「ウェディングドレスを着た岬ちゃんと手を繋いで歩けるなんて、光栄!」
「ねぇ、ねぇ、後で俺の携帯で写メも撮ってもらおうよ。」
擽ったい言葉ばかり掛けてくれる類くんは、雰囲気もだけど昴と中身も少しだけ似てる。 だから余計に戸惑ってしまう。



