人の良い所を見つけられるのは、昴の良い所のひとつだ。 そして私を苛つかせるひとつでもある。
男の人は、自分の特別な女性以外に優しくするべきではない。 好きだって意識をしてから、昴の優しさを鬱陶しく感じる日が多くなった。
こんなのただのヤキモチだって分かってるのに。
梨々花が少し背伸びして、昴の耳元に唇を持っていく。
そんな風に親密にしている姿を見るのだって嫌で、今すぐにここから逃げ出してしまいたい。
私今、きっとすごい酷い顔をしていると思う。
「今ね、一条類くんが来たんです、」
「類くん、来たの?会うのすっごい久しぶりなんだけどー
後で挨拶してこようっと」
「そうなんです。類くん、岬さんの大ファンなんだって。
会えて嬉しそうだった。 岬さんすっごく可愛いもんね」
余計な事を…。梨々花に悪気がないのは分かっているけれど
その話を聞いても、昴は表情を一切変えなかった。 いつも通り余裕で笑う。
私はこんなにやきもきした気持ちになっているのに、昴は私が誰かと仲良くしていたってヤキモチなんか絶対妬かないものね。



