【完】イミテーション・シンデレラ


私達だって委縮してしまい、中々彼女に近づくのはしのばれる。
さっきまで真央に悪態をついていた彼女が、昴とえらく機嫌良く話している。
そんな所も真央の気に食わない要因のひとつではあるのではないだろうか。

「…ねぇねぇ、岬さん…大滝さんと西園寺さんすっごく仲良さそうですね?!」

私のドレスの裾を引っ張り、ちょっぴり不満げに梨々花が言った。

「あー…昴は誰にでもあんな感じだから、それにドラマの主題歌も担当してもらってたし、元々付き合いあるからねぇ」

元々付き合いのある真央とは、先ほどのリハの感じ通りなのだが。

「はんッ。女と来たら誰にでも甘い顔しやがって、昴の奴…。
マジでムカつくな。よくあんな性格の悪い女に良い顔出来るな。 だから八方美人は好かん」

まあ、真央の言葉は嫉妬からくるものだろうけど。 ピリピリとした空気。
というか、梨々花も真央も私を挟んで離さないで欲しい。

両耳に入ってくるふたりの話を聞いている振りをして、視線はずっと昴を追いかけていた。 誰にでもだって優しい笑みを落とす彼にちょっぴり苛々としながら。