【新説】犬鳴村

 当時の冬は現在よりも1〜2度気温が低かったような気がする。雪が降ることはなかったがそれでも冬の夕闇は容赦なく賢治の身体と心を凍りつかさせるのに十分過ぎた。


「亮治さん、お疲れ様です」
そう言ってバイクに駆け寄ったのは洋二。

「おお、あいつはちゃんと可愛がってたか?」
「はい、もちろんっす」
「ならいい。俺はそこの広場で暖をとるからお前たち枯れ木を集めて焚《た》き火をつくれ」
「おす!」


 二人に焚き火を用意させる間、亮治は見張りをするために賢治が縛られていたトンネルの脇の道を上って行った。