【新説】犬鳴村

「洋ちゃん洋ちゃん!あいつが逃げた!」
「何寝ぼけてん…うえっ!マジ!孝夫さんに殺されっぞ!探せ!」

 二人の顔は見る見るうちに青ざめた。孝夫の恐ろしさは十分過ぎるほど二人には分かっていた。殺ると言ったら絶対に殺されるということが。

「おーい!どこだ?」
「馬鹿!呼んで返事とかするかよ?」


茂みの中、山を駆け下りる男達。


「洋二!俺、右探すからお前は左な!」
「おい!育夫、いたぞ!こっちこっち!」
「そっちから回れ。」


 賢治は傷だらけの身体で笹や草が()い茂る冬の暗い森の木々の間を縫うように死にものぐるいで下の新道を目指した。


「おい!逃げても無駄だぞ!何もしねえから出て来いって、なあ。」


カサカサと音がするところを二人で囲むようにゆっくりと近づいて行く男たち。