人生に『もし』はないのかも知れない。


   それなのにすぐに人は『もし』という、
   この不確定さの二文字に望みを、
  そして救いと夢を託すものなのかも知れない。


 この青年やその家族にとっても同じことだった。


   ーーもしこの日、
    仕事が夜勤でなければ…

   ーーもしあの時刻に
    ここを通らなければ…

   ーーもし赤信号に
    間に合ってさえいれば…


『もし』はどこまでも人を追ってくる。