アタシがアンタを好きになるなんて絶対にあり得ない


「ねえ、また告白されてたでしょ?それに、今日は手を繋いで登校って」

席に着くなり、後ろの席の友達がニヤニヤしながらアタシを小突く。

「だからなんなのよ。というか掴まれてただけだよ。ほら、軽く手の跡ついてるし」

苛立ちを隠さずに、友達を無視して少し乱暴に荷物を置いた。少し遅れてから、天澄が教室に入ってきた。女子(と、男子が一部)の上げる歓声をふん、と鼻であしらう。

「いつもやっててよく飽きないね」

アタシの席まで来た、もう一人の友達が呆れたようにアタシに言う。天澄の席はアタシからかなり離れたところにあるから、アイツが自らやってこない限りは、安全だ。

「そろそろ諦めたらどう?」

頭が良くてスポーツ万能。それで顔も良いなんて優良物件でしょ?と、もう一人の友達は首を傾げた。

「諦めるって何をよ!」

ホントはわかってるけど、八つ当たりのように強く言ってしまう。

「告白を断るの」

「なんでよ」

それでまた、反射的に否定の言葉が出てしまう。

「アイツのウワサ知ってるでしょ」

「あー、年齢性別問わずに誰でもイケるってやつ?」

友達はあんまり気にしていない風だった。

「それとも、槙乃に毎日のように告白してるのに、他のひとと付き合ったりデートしたりしてるところが気に食わないの?」

もう一人の友達の言葉に、ぐっと詰まる。

「……そんなわけないでしょ。あの頭がおかしいやつと一緒にいたくないだけ」

そう。天澄のやつ、アタシに告白してくるくせに、他の相手と付き合って、フってフラれてを繰り返しているんだ。ホント頭がおかしい。

「と、言いつつほぼ毎日一緒に登下校してるらしいじゃん」

友達は構って欲しいだけかもよ?と言うけど、それなら尚更何も言いたくないし、アタシがアイツに興味があるとかそんなの思われたくもない。

「それはアイツが勝手についてくるだけだから……!」

ふと天澄の方に視線を向けたら、ばちっと視線が合う。思わず、目を逸らした。