アタシがアンタを好きになるなんて絶対にあり得ない


今は午前7時30分。絶賛登校中。

「ねぇ、まき。どうしたら、キミはボクのコト好きになってくれる?」

そう言いつつ、天澄は悲しそうに眉尻を下げて笑う。勝手に愛称付けて呼んでるけど、指摘するのはもう諦めた。

懇願するその顔だけを見れば、罪悪感に苛まれて思わずOKしたくなる、人もいるだろう。でも、アタシはならない。なぜなら。

「その目線やめな。気持ち悪いったらありゃしない」

悲しそうな顔をしながら、天澄は蛇が獲物を狙っているかのようなじっとりした視線を向けているからだ。諦める気は一切ないと、言いたげに。

「うーん、その視線やめたら、好きになってくれる?」

「どうだろうね」

言ってる側からその目線はやめてないし。アタシが言っても無駄だってことは分かっていたし、天澄も視線をやめたところでアタシが振り向くなんて思っていないのだろう。

そんなことが何も言わなくても分かるくらいには、天澄との関わりは長い。(敢えて『付き合い』とは言わないておいた)

校門が見えてきたので天澄から離れようとしたら、ぱしっと腕を掴まれて離れられなくなる。

「何してんの?」

腕をぐいぐいと引いても一切取れるような気配がない。

「せっかくだから、手を繋いでみようと思って」

にこ、と上機嫌そうに笑って首を傾げる。というか、これは『繋いでる』じゃなくて『掴まれている』としか言いようがない。

「離せバカ!」

そうこうしているうちに、校門の前まできた。

校門の前では、生徒会のメンバーが挨拶運動だか生徒指導だとかなんだかでよく立ってる。思い切り、手を掴まれているのを見られた。

天澄はすごい目立つやつだって自覚が無い。アタシは目立ちたく無いのに。それに、このあと絶対アタシは天澄のファンだとかいうやつらに睨まれるのだろう。

校門を通り過ぎ、靴箱に着いてしまった。靴箱に着いたら、天澄はやっと腕を離してくれた。

「急に何?」

と聞いても、

「なんとなく?」

と上機嫌に返されるから聞いても無駄だと悟る。

急いで靴を上履きに履き替えて、天澄が腕を掴もうとするのを避け、急いで自分のクラスに入った。